【研究紹介】ソフトボーのためのビジュアルトレーニング
石 垣 尚 男(愛知工業大学)
1.トレーニングの前にすべきこと
いいフォーカスがあること、眼をケガしないこと
1)視力矯正
片眼1.0以上、両眼1.2以上に矯正されていることが望ましい
2)眼をガードする
アイガード(視力矯正できる)もある
2.ビジュアルトレーニングのコンセプト
眼で見て、その状況に応じて的確に対応するのがスポーツ。その意味ではスポーツそのものがビジュアルトレーニングである。体力トレーニング、メンタルトレーニングでは、特別に体力、メンタルを抜き出して強化する。これと同様に、眼で見て状況に対応する能力を強化するのがビジュアルトレーニングである。具体的には「見る→判断のスピードアップと状況への対応能力の強化」を目的とする。

3.ビジュアルスキルを教える
ただ、「よく見ていけ」ではなく、具体的に「どこを見たらいいのか」、視点を絞って教える。眼のつけどころを教える。指導者が「見ろ」と言うところと、選手が「見ている」ところが違っていることが多い。
4.トレーニングの具体的な方法
メニュー作りにあたっては以下の配慮が必要である。
1)日頃の練習の中で、楽しくできる
継続してこそトレーニングの意義がある。継続できる一番の要因は楽しいこと。面白く興味が持てる内容で持続させる。また、トレーニングと練習を分離するのも選手には負担である。できるだけ練習の中で取り入れる。
2)大がかりな装置や専門のトレーナーは不必要
身近なもの安価なものの利用で十分である。選手同志がお互いにトレーナー役になるなどの工夫が必要である。
3)トレーニングの内容を複合させ、興味を持続させる
以下のトレーニングを複合させる。
A:眼のトレーニング:動体視力、眼球運動、瞬間視などのトレーニング。数字で表れるのでトレーニングへの動機づけに有効である。得点化して選手間で比較するとトレーニングへの関心が増加するが、このトレーニングだけでパフォーマンスのアップの可能性は少ない。
B:体力トレーニングを工夫する
通常の体力トレーニングを工夫。たとえば、よく行われるダッシュトレーニングは笛で行うが、音で動作を起こすことは少ない。見る→俊敏に、正確に動作を起こすトレーニングを工夫する。音なら速いが、見て反応すると全然できない選手も多い。
C:ソフトボールの練習の中で工夫する
練習の中で、見る→テクニックと結びつけたトレーニングを行う。通常の練習はほとんど惰性で、しかもすでにできることの繰り返しが多い。また、パターン化された技術はできても臨機応変の対応ができない選手もいる。
5.具体的な方法
上記の最も基本的なトレーニング方法を例示する。例でありバリエーションは工夫次第である。
1)集中して見る、瞬間的に見る能力を強化する
・マースデンボール、ボールにアルファベット、数字などを書き眼の高さに紐で吊し、ボールをスイングさせて眼球運動だけで読みとる。紐を長くしたり、眼との距離を狭く、広くする。
・ソフトテニスのボールにアルファベットや数字などを書き、壁にあてて跳ね返るボールの文字をできるだけたくさん読みとる。
バリエーション:最初に見えた数字が奇数なら右手、偶数なら左手でとる。
・A4〜B4の紙にランダムな数字を書く。これを20〜30cmくらいの距離で眼球運動だけで声を出して読み上げる。
バリエーション:読みとる方向をかえる。一つ飛ばして読むなど。
・6桁の数字を書いたボール紙を瞬間に見せる。数字を素速く書き、正解数を記録する。
バリエーション:左右の端の数字を合計して奇数なら手を叩く、偶数なら手を叩かない。たとえば「2」があれば手を叩くなど。
・1〜20の数字をB紙に張り、1〜20、20〜1へ順に両手でタッチする。時間を計る。
バリエーション:数字の位置を変えたり、数を増やす、数字を増やす、片手だけでタッチなど。
● 2人でジャンケン。勝った人は、指で数字(0〜5)を出す。奇数なら右を向く、偶数なら左を向く
2)体力トレーニングを工夫する
● 回転ジャンプコール:2人一組、1回転ジャンプをする。その間に相手は片手で0〜5の数字を出す。数字をコールする。左右交互に回る。
●ダッシュトレーニング
・コーチが瞬間的に出す片手の指の数が偶数なら右、奇数なら左へダッシュ
・コーチが2回、連続して片手で指を出す。合計が偶数なら右へ、奇数なら左へ
・左右の手で同時に数字を出す。合計が偶数なら右、奇数から左へ
・2名のコーチが10m以上離れ、同時に片手で数字を出す。選手は大きく首を振って判 断し、ダッシュする。コーチとの距離が近いほど難しくなる。
・2名のコーチが10m以上離れ、両手で○か×のサインを出す。選手は前方を見ていて視野の周辺で○、×を判読する。両方○なら右へダッシュ、両方×なら左へ、左右が違えばダッシュしない。
●リアクションボール(トリッキーボール)
:お互いでバウンドさせながら両手で、片手だけでキャッチ。ボールに数字を大きく書き入れておき、数字を読むようにすれば動体視力のトレーニングにもなる。
バリエーション:壁に向かって構えさせ、壁から跳ね返るボールをグローブ側の手でキャッチさせる。
●3色ボール:赤なら右手、青なら左手、黄色なら両手でキャッチ
3)ソフトボールの練習の中でトレーニング
●(1)ボールの数字を読む
ボールに0〜9までの数字を1つ書く。数字の大きさは直径5cm程度、慣れてきたら次第に小さくする。例えば3ヶ月行うとして最初の1ヶ月は大、次は中というように。
・キャッチボールのとき声を出してコールする。
・守備練習で捕球したとき数字をコールする。打球が速い場合には無理。守備練習の初めにスローボールで行う。
●(2)トスバッティング
・バッティングの瞬間に数字をコールする。
・打者の後ろ(捕手の位置)からトスを行い、数字をコールする。
・打つ瞬間に奇数なら打ち、偶数ならバッティングをストップする。あるいは偶数なら流し打ち
・ボールを赤、黄、青に色分けする。
赤だったら打たない。黄は空振り、青は打つ。あるいは黄は流し打ち、青はセンター返しなど。あらかじめボールの色がわからないように捕手の位置からトスをおこなう。
・ゴルフボールに数字を書き、モップ用の棒などの細い木で芯にあて、同時に数字を読む。
・ゴルフボール大のスポンジボールを打つ。芯に当てないと飛ばない。
(3)フリーバッティング
通常、投手の投げるボールよりはるかに速いボールをバッティングマシーンで投げる。
あるいは距離を短くして投手が投げる。
・頭を動かさずに眼だけでボールをホームプレートまで追跡する。
・バントする。バットに当たるまでボールをよく見る。
・通常のバッティングをする。
・数字を1個書き入れたボールをバッティングマシーンで投げ(通常のスピード)、数字を読みとる。
(4)シートノック
・声でなくボールの色でプレーさせる。赤ならバックホーム、黄ならファースト、青ならセカンドなど。
6.トレーニングの効果
「ポパイのほうれん草」の効果はないが、継続するとジワジワと効果が出てくる。最低でも2ヶ月、できれば3ヶ月は続けよう。止めると効果はなくなるので、シーズン中も少しずつでも続けよう。どんなトレーニングでも「こんなモノ」と思っていては効果はない。効果を信じ、トレーニングに集中することが大切である。そうすれば、ボールの縫い目が見えたり、ボールが止まって見えるのもまんざら嘘ではないことに気づくはずである。
石垣 尚男(いしがき ひさお)氏のプロフィール
● 1947年静岡県生まれ。東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業
● 現在 愛知工業大学教授(基礎教育系健康科学教室)、医学博士
● 趣味は、伝統的毛鉤釣りであるテンカラと無農薬有機野菜の栽培(自称、半農半漁人)
● 質問やアドバイスはE-mailで、アドレス:
ishigaki@ie.aitech.ac.jp
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