【感動の一日】

2006年6月2日

昭和13年高等師範科卒業 小林貞子(旧姓 平井)

 

「女子レスリングワールドカップ」国際大会が名古屋で観戦出来る機会を与えて頂いた事に感謝しながら稲永スポーツセンターに足を運びました。

始まる30分前に到着し案内を受け、着席、場内は緊張感が漂う。

間もなく学長谷岡郁子先生にお姿にほっと固い握手、平野久美子さんの着物姿に心が和み平常心に戻りました。競技前の学生さんの微笑ましい姿、応援団の力強い声援、選手の方々の素晴らしい活躍に無事終わりますことを祈り続けました。監督の先生のお力、存在の大きさを想像。選手の方々同様、その功績を永久に称え続ける事でしょう。

昭和11年、ベルリンオリンピック選手として家事体操専攻科(当時)出身の槍投げに山本定子先生、円盤投げに学生児島文さんを見送った日の事、目の前に展開されている競技と交差、感無量でした。

伝統ある中京女子大学に一層の輝きを見せた一日でした。そして私の人生に大きな華を添えて呉れた感動は消える事なく、想い出として残る事と思います。

 

 

【Jリーグとクリスマス・プレゼント】

2006年6月26日

中京女子大学 教授 米谷冨男

 

1993年5月15日、Jリーグが開幕した。プロ野球以来60余年ぶりのチームスポーツのプロリーグの誕生であり、日本のスポーツ史に新たな1ページが刻まれ、この日をきっかけに日本人のスポーツ観が変わった。

Jリーグ誕生前の日本サッカー界は長く低迷し、どの試合もスタンドは閑古鳥が鳴き、マイナースポーツの典型とされていた。このためアマチュアリーグとして多くの改善を試み、その結果、辿りついた答えがプロリーグの創設であった。

この創設にあたり掲げられた理念の中で特に注目すべきことは、「豊かなスポーツ文化の振興と・・」に言及していることであり、この理念によってJリーグが「日本初のスポーツを目的としたスポーツ組織」と評される所以である。「スポーツ文化の振興」をはかるという理念の実現は、現代のスポーツ界全体が抱えている課題でもある。

Jリーグは、1996年より「百年構想」を掲げ、三つの理念現実の告知活動を展開している。一つは、どの町にも緑の芝生に覆われたスポーツ施設を作ること、もう一つは、誰もが自分のやりたいスポーツを楽しめるスポーツクラブを作ること、そして最後の一つは、「観る」「する」「参加する」という様々なスポーツとの関わりを通して世代を超えたふれあいの輪を広げること、である。

この構想は「スポーツ文化」の構築に向けた告知活動であり、着実に歩を進めている。

Jリーグが掲げる理念は、ドイツスポーツ連盟の「スポーツ・フォア・オール」とする理念を手本としている。ドイツスポーツ連盟は、全ての人のスポーツライフを推進するため、各地域のスポーツクラブの「自助」と地方行政機関の「支援」という「個」と「公」のパートナーシップでスポーツの環境整備を進めている。この自助と支援の関係が成り立つのは、ドイツが地方権社会であるという背景がある。また、ドイツではスポーツクラブを中心としてコミュニティーが形成されている。

地域に根ざしたドイツのスポーツクラブの基軸は「個の自立」にあり、それを支えるのが地方分権社会構造である。この社会構造はドイツ特有の物でなく、ヨーロッパ社会全域がこの構造を形成している。日本は未だこれと対極の中央集権社会である。

「個の自立」を培うのは生活習慣に由来していると聞いた。それは「クリスマス・プレゼント」である。ドイツでは大人から子どもまで各自が家族の一人一人にこのプレゼントを手渡す。その場合のルールが一つあり、それは相手に欲しい物を聞いてはいけないことになっている。家族一人一人をよく観察して何が喜ばれるかを考え、自分の身の丈にあったプレゼントを用意する。これを毎年繰り返しているうちにコミュニティの中の「個」が培われていくと。日本では、「個の自立」を考えさせられる。

今、集権から分権への入口の扉に立っている。人もスポーツも社会も。